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主にサカナクションの事を打ち込むブログ。好きな時に好きな様に好きな風に。

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雨と傘とツイてない日ep

帰り際、雨が止み始めたのを見て、叫んだ。

「今更かよ!」

最後までツイてない日。また自分で自分を笑った。
ただ違うのは、彼女は幸福に満ちていたという事だった。
| 雨と傘とツイてない日 | 18:02 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日9

せっかくここまで来たのに、何もせずには帰れなかった。
コンビニに寄る為に自転車を止めた。
彼女はやりきれない気持ちを抱えて、傘を二本持って店に入ろうとした。

その時

一人の女性が走ってきた。
まだ駅を出てまもなくで、今からまさに濡れて帰るところだった。

真琴が探し求めていた人だ。
急いで声を掛ける。

「すいません!良かったら傘使ってください!」

女性は目を丸くした。
分かっている。最初は警戒するものだ。何十分前の自分と同じように。

「え、でも、いいんですか…?」

同じような反応がおかしかった。
安心させる為に、笑顔で答えた。

「どうぞ!」

「本当にいいんですか…?」

(この人の目には私はどんな風に見えてるのかな)

少しばかり気になったが、変態と思われても良かった。
おじさんがそうしてくれたように、ただ困ってる人を助けたかった。

「ありがとうございます。」

傘を受け取ってくれた。
真琴は自分の傘を閉じて、コンビニに向かった。
渡してすぐは、わざと後ろを振り返らなかった。

コンビニに入る直前、女性がこちらを一度振り返りかけて、止めた跡を見た。

これでいい。

あの人なら、大丈夫。つないでくれそうだ。
お礼などは要らない。誰かにつないでくれたら、それでいいのだ。

そうして私は満足気にコンビニに入って、
いつもの「さけるチーズ」を買って帰った。

雨と傘とツイてない日12
| 雨と傘とツイてない日 | 18:01 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日8

ガチャッガチャッ

真琴は大急ぎで着替えて、傘を持って出た。
大きくて丈夫な傘だ。ちょっとの雨ではびくともしない。

そしてもう一本。おじさんの緑色の傘。

自転車で駅に向かった。時刻は午前一時半を過ぎようとしていた。

さっき見た、雨宿りする人々はいなくなっていた。
降り始めて一時間以上経っていたのだから、当然といえば当然だ。

(それでも、困っている人はきっといる)

まだ雨は止まない。音は衰えようとしない。
真琴は「その人」を探して、足に力を入れる。

駅まで着こうとしていた。
あんなに雨宿りしていた人もここに来るまでに一人も見なかった。

(あぁこんな時までツイていないのか)

無駄足だった。
最後までどうしようもない。馬鹿らしい自分。自分を笑う自分。

今日一日ツイてない日にふさわしい結末だった。

雨と傘とツイてない日08
| 雨と傘とツイてない日 | 17:59 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日7

まだ傘の柄に残る熱を握り締め、真琴は一人で反省していた。
ただ親切にしてくれる人を疑ってしまったのだ。
心の中で謝った。もう届かない声だけど謝った。

ポッポツポツポツポツ

雨を凌いでくれる傘。緑色の傘。
そんなに大きくはなかったが、作りはしっかりしていた。
この大雨にも負けない。

行く道には逃げ場を失った人々が、自分と同じように雨宿りをしていた。
改めて自分に傘を譲ってくれたおじさんに感謝し、
また、傘を持たない人々に同情した。

ふと。考える。

(この傘はもう返せないだろうな)

名前も聞かなかった。そんな余裕はなかった。

見知らぬ他人へ親切にしてくれる人が、まだこの世にいるという事実。
おじさんに伝えられない感謝の気持ち。
行き場をなくして揺れた気持ち。

(私もあのおじさんみたいに優しくなれたなら)

家路へ向かう足は自然と速くなっていた。

雨と傘とツイてない日07
| 雨と傘とツイてない日 | 17:57 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日6

真琴は目を白黒させた。

差し出された傘を受け取るのを、彼女はためらった。

このご時世だ。何をされるものか分かったものじゃない。
一歩引いて答えた。

「いえ、いいです!」

「ええんよ。傘持ってないんやろ?誰か迎えに来るんか?」

「…いえ、そういうわけでは…」

「ほら、やったらあげるよ。」

「でもおじさん濡れちゃうじゃないですか…」

「ええんよ、家近いからね」

「…」

一瞬にして考えた。確かに向かえなどない。自分にはそんな人はいない。
でもおじさんが濡れてしまう。しかし雨は止む気配を見せない。
何度も望んだ傘。まさか譲ってくれる人がいるだなんて。
変な人なんだろうか?
おじさんの言葉の節々に注意を払ったが、そこに嫌らしさは感じられなかった。

「ほら。」

観念した。

「…すいません!ありがとうございます!」

満足気な顔をして、おじさんは去っていった。
何もされなかった。ただ、傘を譲って、おじさんは去っていった。

雨と傘とツイてない日09
| 雨と傘とツイてない日 | 17:56 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日5

連日の疲れが溜まっていたせいだろう。
眠ってしまっていた。

シャアァアアアー…

近づく音に、真琴は目を広げた。

驚いて時計を見るが、眠っていた時間は10分に満たない。
一安心するも、目の前の光景には何ら変化はない。

いや、ひとつ気になる事があった。

音だ。雨を巻き込みながら走るタイヤの音。
自分に近づいてくるそれに警戒する為、彼女は立ち上がった。

見ると、自転車に乗ってるおじさんだった。
真琴の目の前の道を通ろうとするところだった。

(傘いいなぁ…)

この時も彼女は見ていた。羨ましかった。
何度も見送った光景。この時もそうなんだろうと考えていた。

しかし違った。

「ほら。」

それは突然だった。

雨と傘とツイてない日05
| 雨と傘とツイてない日 | 17:53 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日4

(濡れて帰ろうか)

そう考えると同時に、翌朝に風邪を引いてる自分が見えた。
仕事は休めない。明日も終電。

もう一度、辺りを見渡す。雨は止みそうにない。
一歩踏み出してみるが、濡れて帰る覚悟はまだ出来ていない。

「困ったなぁ…」

時間の潰し方を失ってしまった。
彼女はその場に座り込んだ。

ただ、雨を見ていた。
途切れる事のない直線を。奥に広がる濡れる街を。
タクシーを留めていく人。傘を持って走る人。
自転車で駆け抜けていく人。

傘を持っている全員に羨望の視線を送った。
届くはずもなかった。誰だって自分が大事だからだ。

「フゥ…」

考え事を繰り返すうちに
彼女はいつしか目をつぶっていた。

雨と傘とツイてない日04
| 雨と傘とツイてない日 | 17:52 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日3

檻の中だったが彼女の気持ちは決して沈んではいなかった。
「雨宿り」があまりにも久しぶりの感覚だったからだろう。

終電後の深夜、風邪、今日という日の運のなさ。

彼女の気持ちを高めるには十分な要素だった。

水に反射する光や、水中に移りこむ信号。
どの色も二倍三倍に膨れ上がり、いつもとは違う感触だった。
持っていたカメラで海と化した街を撮る。

彼女と肩を並べる収容者は、現れては去って行った。

嬉々として写真を撮る彼女に
声をかけたげな者も何人かいた。

その気配を感じる事すら彼女は楽しんでいた。
そこに他意はなく、純粋に楽しかったのだ。
ひとしきり写真を撮り終えると、彼女は満足した。

そして気づく。

通り雨と呼ぶにはふさわしくない雨だという事を。

会社に置いてきた傘の事が思い出されたが、遅かった。
横目にはコンビニが見える。傘を買おうと思えば買える距離だ。
だが、家にも会社にも数本ある「傘」を彼女はとても買う気にはなれなかった。
閉じ込められていた仲間は、いつしかいなくなっていた。

雨と傘とツイてない日03
| 雨と傘とツイてない日 | 16:20 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日2

「…本日、大阪…夕方から夜にかけて通り雨が降るでしょう、
皆さんお気をつけてお出かけ下さい。」

徹夜明けの月曜日の朝だった。
思えばこの予報を聞いておきながら、
傘を持たなかった時点で不運は始まっていたのかもしれない。

睡眠不足がたたって日中に風邪を引いた。
自業自得の出来事に、彼女は自嘲気味に笑った。

そしてこんな日は決まって良くない事が続く。
予測は容易だった。
雨の予報。雨女。寝不足で風邪。ツイていない月曜日。


案の定、終電で帰ってきたところに、この大雨。


ポツッ―ポツッ―

振り出した雨粒が太く重たい直線に姿を変えるまで
時間はそうかからなかった。
何人もの人が檻に捕まった。もちろん彼女もその一人だった。

雨と傘とツイてない日02
| 雨と傘とツイてない日 | 16:14 | comments(0) | |

雨と傘とツイてない日1

真琴は困っていた。

目の前を見渡すと一面が海だったからだ。
その海は今まさに出来上がっている最中であり
それを防ぐ術を彼女は持っていなかった。

ボトボトボトボトボト

ザンザンザンザンザン

止め処なく打ち付けられるそれを、人は雨という。
しかしただの雨ではない。通り雨。しかも大粒大。
粒と表現するにはあまりに激しすぎた。
真琴の眺めるそれは明らかに直線を描いていた。


「フゥ…」


真琴はため息を一つついた。
今日という日を思い返していたのだ。

雨と傘とツイてない日01
| 雨と傘とツイてない日 | 15:58 | comments(0) | |
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